「明治もの蒐集」で時代に浸る
時間をさかのぼる事は出来ないが、何か手がかりを得て、絵画とか写真とか、その時代を感じるのにはまず本。それが「明治もの蒐集」(料治熊太著昭和38年徳間書店刊)です。
絵でも本でも写真でも地図でも、それが明治にドウ一般の人に扱われていたのか、どれほど身近なものだったのか、もしくは一部のものでしかなかったのか、その具体的な雰囲気を知るのにこの本です。
目次の端々に感じが出ていますが、「文明開化と版画」「銅版と石版」「絵ハガキの流行」「野に朽ち果てる絵馬」などなど、たくさんの写真と微にいる文章でどう受け入れられたか幾分分かる気がします。
どれも好きな扱い品ですが、どれだけ分かっていて売り買いしていたのでしょうか。
「図解博物館史」を参考に
よく分からないけれど、探している人の多いのが博覧会関係の物。でその時にこの本。「図解博物館史」(椎名仙卓著平成5年雄山閣出版刊)です。
博物館の変遷を概観する、と帯にありますが、私は主に、その中の博覧会、物産会の所を見ます。博覧会の(主に明治時代ですが)案内、会場の地図、錦絵、木版の一枚物、会の報告書などなど、需要は沢山ですが、説明するのに骨な物がおおいのです。
明治大正の膨大な見たい知りたいに応えるべく開催された各地の博覧会、でもその細かい内容には(私には)分からない事が多い。それゆえお問い合せも又来る。で本を見る。
何せこの本、本文179頁で写真が340枚ですから。見てきたように御案内は出来ませんが、幾分のお答えは(本を見てからですが)できます。
「日本の探検家」を知る
探検、冒険は個人的に好きな分野、テーマなので出来るだけ関連の本に目を通すべく努めてはいる。その一つがこの本。「日本の探検家」(長沢和俊著1966年早川書房刊)です。
あとがきに、「もともとは東海大学探検部の有志諸君に、数回にわたって物語った明治の主な探検家のメモにすぎなかったが」とあるが、どうして、おもしろい。
シベリヤの榎本福島そして玉井喜作(この人は異色)、千島の郡司、南方の鈴木岩本、南極の白瀬、チベットの河口青木、中央アジアの井上日野、シルクロードの大谷探検隊など江戸期以降の案内である。
著者が日本人には探検家の素質がある、と言っているのが嬉しい。内奥の思いをこの手の本で紛らしているわけではないが、読んでいるだけで、共に奥地に突き進んでいる自分がいる思いはいたします。
巻末に詳しい文献目録もあります。もっとも、全部を読んだわけではなく、興味のある北方の部分だけに目を通しました。
「暦の話」で暦を知る
ある時たくさん暦を仕入れた。で、さあ困った。暦の事を、それも古い時代の事が、全く分からない。それ、参考書だ。それが「暦の話」(渡邊敏夫著昭和19年増進堂刊)です。
かいもく分からない、知らない分野に分け入るとき、それも仕事での時は迷わず、まず参考書探し。これが私の方法論です。
江戸期の暦の基本となる知識、数え方の名前、十干(甲乙丙丁です)十二支(子丑寅卯辰巳のことです)もちゃんと分からない。どんな種類があるのか、その中でどれがたくさん流布したのか、すべて受け売りで、付け焼き刃で、江戸明治の暦を自分なりに分類し、説明を書き、価格まで付けてしまいました。
江戸期の物では、伊勢暦が大部分でしたが、ごく身近で毎日利用している物でも、その来歴を全く知らないものどもが、実はそこここに沢山あるのでしょうね。
「美術手帳」を引く
ハンディーで(文庫版)ありながら、過不足無く必要事項の詰まっている本。帯の惹句に、茶道人・美術愛好家必携資料満載の便利事典とある。
古書画仏教絵画陶磁茶道具その作家名簿年表鑑定人から掛け軸の図解まで539頁にぎゅっと詰まっています。
「美術手帳」(東京美術青年会編著平成5年主婦の友社発行)です。たぶん東京地区の美術骨董業界の青年部が作った物なのでしょう。
これを私は、本と骨董品の境界にある、且つ私の取り扱い分野の物を仕入れるとき、仕入れたとき、説明書きを付けるときに、事典として引くのに用います。本屋が扱う境界線のものとは、私の場合、郷土出身者の幅物(掛け軸)や短冊などです。(郷土資料のひとつとして)
ときに古本の業界にこんなポケットに入る、便利な事典があったら嬉しいなーとつくづく思います。