「古本年鑑」を見る

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 戦前の古本を取り巻く事々を知るにはこの本。「古本年鑑」(古典社編集発行、昭和8年)の1933年版1935年版1936/37年版です。
 沼津にあった出版社です。
 そんな呼び名が世間でまかり通っていたかは、しかとは分かりませんが、この本では「古本界」と呼び、その業界の森羅万象といえるほどに広くデーターを載せている。この頃の古本屋のことを知りたければまずこの本といえよう。
 まず年譜があり全国の市会一覧があり、名簿見切本売立古書市、そして肝心の古本時価表が出ている。更に興味深いのが「古本関係雑誌記事紹介」です。
 個人的にそんなに面白いのは当然で、本のそこここに見知っている先輩諸氏、はたまた先輩のお店が読み取れるからです。その延長線上に我が店もあるかのごとく夢想し得るからです。
 ただただ個人的にうれしさに浸りつつぱらぱらと頁をめくれるからです。
 このなかで「売り立て」の一節がありそこにはいくつもの大蔵書家の売り立ての落札記録が各年度ごとに出ています。が、近年は当業界で聞かなくなったことの一つに入るのがこの売り立てです。それは蔵書家が少なくなってきているからということでしょうか。それならとても寂しいです。